ドラマトゥルクという役割を知っていますか?

山田翔 WEB SITE

2025/11/07 23:15

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「ドラマトゥルク」という言葉を初めて聞いたのは、大学生の頃でした。

私が通っていた大学には学内に劇場があり、学生が自由に公演を打つことができました。

学内の仲間だけでなく、外部からもお客様をお招きして、集客まで含めて実践していたのが印象に残っています。

 

授業の一環としての公演もあり、ドラマトゥルクという役割を知ったのはそのときでした。

教授の提案で、外部からドラマトゥルクの方に入っていただき、演出の方向性などを一緒に話し合う機会があったのです。

 

でも正直なところ、当時の私はその役割がピンときていませんでした。

失礼な話ですが、友だちと「本当に必要なのかな?」なんて話していた記憶もあります。

 

せっかくまとまりかけていたものが、ドラマトゥルクの意見でまた揺れ動いたりして、

「もう形になりそうだったのに」と戸惑ったこともありました。

何をする人なのか、どう関わるのか、当時の私にはよくわからなかったのです。

 

でも今、あらためて振り返ってみると、あのときの経験が少しずつ腑に落ちてきています。

 

ドラマトゥルクとは、舞台芸術において作品の背景や構造、テーマを掘り下げながら、演出家や出演者と対話し、作品の方向性を一緒に考えていく人。

演出とはまた違う立場から、問いを投げかけたり、視点をずらしたりして、作品の深度を広げていく存在です。

 

「これだ!」と勢いよく進みたくなるときに、「本当にそれでいいの?」と立ち止まるきっかけをくれる。

より良い作品にするために、対話を促し、もう一度考え直す時間をつくる。

そんなポジションです。

 

最近の私は、ライブやイベントの企画をする中で、「これってドラマトゥルク的なことなのかもしれない」と思う場面が増えてきました。

演出ではなく、出演者の思いや空間の流れを汲み取りながら、「この場に何が必要か」「どうすれば伝わるか」を考える。

そんな役割が、ライブの現場にもあるような気がしています。

 

もちろん、私がその役割をちゃんと務められているかはわかりません。

でも、誰かの表現がより届くように、誰かの思いが安心して表舞台に出せるように、

そっと支える存在として、ドラマトゥルク的な視点を持ち続けたいと思っています。

 

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