ドラマトゥルクという役割を知っていますか?
「ドラマトゥルク」という言葉を初めて聞いたのは、大学生の頃でした。
私が通っていた大学には学内に劇場があり、学生が自由に公演を打つことができました。
学内の仲間だけでなく、外部からもお客様をお招きして、集客まで含めて実践していたのが印象に残っています。
授業の一環としての公演もあり、ドラマトゥルクという役割を知ったのはそのときでした。
教授の提案で、外部からドラマトゥルクの方に入っていただき、演出の方向性などを一緒に話し合う機会があったのです。
でも正直なところ、当時の私はその役割がピンときていませんでした。
失礼な話ですが、友だちと「本当に必要なのかな?」なんて話していた記憶もあります。
せっかくまとまりかけていたものが、ドラマトゥルクの意見でまた揺れ動いたりして、
「もう形になりそうだったのに…」と戸惑ったこともありました。
何をする人なのか、どう関わるのか、当時の私にはよくわからなかったのです。
でも今、あらためて振り返ってみると、あのときの経験が少しずつ腑に落ちてきています。
ドラマトゥルクとは、舞台芸術において作品の背景や構造、テーマを掘り下げながら、演出家や出演者と対話し、作品の方向性を一緒に考えていく人。
演出とはまた違う立場から、問いを投げかけたり、視点をずらしたりして、作品の深度を広げていく存在です。
「これだ!」と勢いよく進みたくなるときに、「本当にそれでいいの?」と立ち止まるきっかけをくれる。
より良い作品にするために、対話を促し、もう一度考え直す時間をつくる。
そんなポジションです。
最近の私は、ライブやイベントの企画をする中で、「これってドラマトゥルク的なことなのかもしれない」と思う場面が増えてきました。
演出ではなく、出演者の思いや空間の流れを汲み取りながら、「この場に何が必要か」「どうすれば伝わるか」を考える。
そんな役割が、ライブの現場にもあるような気がしています。
もちろん、私がその役割をちゃんと務められているかはわかりません。
でも、誰かの表現がより届くように、誰かの思いが安心して表舞台に出せるように、
そっと支える存在として、ドラマトゥルク的な視点を持ち続けたいと思っています。